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Archive2011年07月 1/1

南からの種子(竹内浩三)

南からの種子南から帰った兵隊がおれたちの班に入ってきたマラリヤがなおるまでいるのだそうな大切にもってきたのであろう小さい木綿袋に見たこともない色んな木の種子おれたちは暖炉に集まってその種子を手にして説明をまったこれがマンゴウの種子樟のような大木に真っ赤な大きな実がなるというこれがドリアンの種子ああこのうまさといったら気も狂わんばかりだ手をふるわし 身もだえさえして語る南の国の果実おれたち初年兵はこ...

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行軍二(竹内浩三)

行軍二あの山を越えるときおれたちは機関車のように 蒸気ばんでおっただまりこんで がつんがつんと あるいておった急に風がきて 白い雪のかたまりを なげてよこした水筒の水は 口の中をガラスのように刺した。あの山を越えるときおれたちは焼ける樟樹であったいま あの山は まっ黒でそのうえに ぎりぎりと オリオン星がかがやいているじっとこうして背嚢にもたれて地べたの上でいきづいていたものだまたもや風がきて雨を...

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行軍一(竹内浩三)

行 軍 一白い小学校の運動場でおれたちはひるやすみした枝のないポプラの列の影がながいポプラの枝のきれたところに 肋木の奇妙なオブジェに赤い帽子に黒い服の ガラスのような子供たちが流れくずれて かちどきをあげておれたちの眼をいたくさせる日の丸が上がっている校舎からオルガンがシャボン玉みたいにはじけてくるおれのよごれた手は ヂストマみたいに飯盒の底をはいまわり 飯粒をあさっているさあ この手でもって「...

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鈍走記(竹内浩三)

鈍走記生まれてきたから、死ぬまで生きてやるのだ。ただそれだけだ。       日本語は正確に発音しよう。白ければシロイと。       ピリオド、カンマ、クエッションマーク。でも、妥協はいやだ。       小さな銅像が、蝶々とあそんでいる。彼は、この漁業町の先覚者であった。       四角形、六角形。そのていたらくをみよ。       バクダンを持って歩いていた。生活を分数にしていた。    ...

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ぼくもいくさに征くのだけれど(竹内浩三)

ぼくもいくさに征くのだけれど街はいくさがたりであふれどこへいっても征くはなし かったはなし三ヶ月もたてばぼくも征くのだけれどだけど こうしてぼんやりしているぼくがいくさに征ったなら一体ぼくはなにするだろう てがらたてるかなだれもかれもおとこならみんな征くぼくも征くのだけれど 征くのだけれどなんにもできず蝶をとったり 子供とあそんだりうっかりしていて戦死するかしらそんなまぬけなぼくなのでどうか人なみ...

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