星 月 夜

ARCHIVE PAGE

Archive2011年06月 1/1

ある娘を愛した (竹内浩三)

天気のいい日に続き喫茶店に入ると、うらぎったおんなが好きであったカルテットが鳴りだした。だまれ、だまれ。おれが悶絶しそうになっているのを、お前はすましてながめていたぞ。お前はつべたかった。ぼくは、なにかわからぬものにたいして、ひじょうにふんがいした。シラップのコップがふるえだした。決シテイカラズイツモシズカニワラッテイルおんなが、「あなたの生き方を、立派だと思うわ」と言ったので、その白いワンピイス...

  •  0
  •  0

ある娘を愛した (竹内浩三)

天気のいい日に続きうらぎったおんなに、れんれんとしているのは、ばかものである。植物園は、ばかばかしいほど明るかった。おんなの気にいるような、ことばやそぶりを、ぼくは考えていたが、いい智慧もでなかった。すなおにふるまえばいいのだと自信した。おんなが芝生へねころがると、ぼくは、おろおろして、急に大喫煙者になった。これもすなおで、なかなかいいと自信した。画 十五夜さま雨ニモマケズ風ニモマケズ雪ニモ夏ノ暑...

  •  0
  •  0

ある娘を愛した(竹内浩三)

ある娘を愛した天気のいい日に 天気のいい日におんながきて、ロケットを忘れて行った。おんなのアパートまで持って行ってやった。わざわざそんなにしなくてもいいのだけれどもした。 ぼくは、あるおんなにうらぎられて、一月ほどは、きちがいのようにしていた。そのおんなのしうちは、ひどすぎた。 そこへ、このおんなが、風のようにやってきて、ぼくの部屋のそうじをした。おんなの部屋とおんなの歯が白かった。マチスの絵とお...

  •  0
  •  0

高円寺風景 完 (竹内浩三)

高円寺風景上野駅にて雪国から友だちが帰ってくるので、ぼくは上野駅へ迎えに行った。東京中で、一番「駅」の感じのするのは上野駅である。甘いノスタルジイが、まぬけた表面で、ふわふわ天井の高い構内をただよっている。雪のために、列車は、二十分延着した。背の高い友だちは、赤らんだ顔を昴然と伸ばして出てきた。あちらは三日二晩ふぶいていた、と云った。「おふくろは?」「まだ死なぬが、時間の問題だそうな」とこれまた昴...

  •  0
  •  0